「北陸新幹線が延伸したら、うちの地域にも外国人が来るようになるかな?」
北陸エリアの自治体関係者や観光事業者から、そんな期待の声を聞くことが増えました。でも同時に、「ただ新幹線が通っただけでは人は来ない」という不安もあるはずです。実際、過去の新幹線延伸事例を見ると、開業ブームの後に観光客数が減少した地域は少なくありません。
でも実は、北陸新幹線の金沢・福井経由関西ルートの延伸は、これまでの延伸とは異なるポテンシャルを持っています。東京と大阪という二大インバウンドゲートウェイが一本の新幹線でつながることで、訪日客の観光動線そのものが塗り替わる可能性があるのです。
観光動線の構造が変わるインパクト
現在、訪日外国人の多くは東京から大阪へ東海道新幹線で移動し、いわゆるゴールデンルートを辿ります。北陸新幹線が大阪まで全線開業すると、東京から金沢、福井、京都を経由して大阪へ至る「第二のゴールデンルート」が誕生します。
2024年3月の金沢・敦賀間延伸では、開業後3ヶ月で敦賀駅の乗降客数が前年同期比で約2.5倍に増加しました。さらに、福井県の外国人宿泊者数は延伸前の2023年と比較して約40%増加したという調査結果があります。新駅の設置は、それだけで地域の認知度を押し上げる効果を持つのです。
福井県の先行事例に学ぶ
福井県は延伸に先立ち、東尋坊や永平寺、恐竜博物館といった観光資源の多言語対応を一斉に強化しました。特に恐竜博物館は、リニューアルオープンと新幹線延伸のタイミングを合わせることで、国内外からの来館者が大幅に増加。2024年度の来館者数は過去最高を記録しています。
ポイントは、「新幹線が来てから」ではなく「来る前」に準備を終えていたことです。多言語サイン、キャッシュレス決済、外国語対応スタッフの確保。これらを開業日にはすべて稼働させていたからこそ、開業ブームを一過性に終わらせず、リピーターの獲得につなげられました。
新駅周辺の「空白地帯」こそがチャンス
延伸ルート上の新駅周辺は、多くが観光インフラの空白地帯です。宿泊施設が少ない、飲食店の外国語対応ができていない、二次交通が弱い。しかし裏を返せば、これらを先行して整備した自治体が、延伸後の観光需要を総取りできる可能性があります。
加賀温泉駅周辺では、延伸を見越して地元旅館が連携し、外国人向けの温泉体験プログラムを共同開発しました。駅から旅館までのシャトルバスを多言語対応にし、チェックイン時の説明動画も4言語で制作。結果として、台湾や香港からの個人旅行者の宿泊が増加しているといいます。
今から始めるべき3つの備え
全線開業のタイミングがいつになるかは未確定ですが、準備に「早すぎる」はありません。
第一に、自地域の観光資源を「外国人の目線」で棚卸しすること。日本人にとって当たり前の風景や食文化が、訪日客には新鮮な体験になることがあります。第二に、多言語対応とキャッシュレス決済の導入を進めること。これはインバウンド受け入れの最低条件です。第三に、近隣自治体との連携ルートを構想すること。一つの駅や一つの観光地だけでは滞在時間は伸びません。周遊ルートを作ることが、地域全体の経済効果を最大化します。
新幹線が来るのを待つのではなく、来る前に動く。完璧な計画を立てる前に、まずは自地域の現状把握から始めてみてください。
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