2026.06.15

メニュー翻訳だけでは足りない:体験を届ける多言語メニューの作り方

「メニューを英語に訳したのに、外国人のお客さんがなかなか注文してくれない」

多言語メニューを用意した飲食店から、こうした困惑の声を聞くことがあります。せっかくコストをかけて翻訳したのに、お客さんはメニューを見ても迷っている。結局「おすすめは?」と聞かれて、片言の英語で説明することになる。翻訳しただけでは不十分だったのだろうか。

でも実は、翻訳の精度が問題なのではなく、メニューが「体験を届けていない」ことに原因があります。料理名を正確に訳すだけでは、その料理を食べたいという気持ちは生まれないのです。

「Grilled Fish」では何も伝わらない

たとえば「鮎の塩焼き」を「Grilled Sweetfish」と訳したとします。英語としては正しい。しかし、sweetfishが何かわからない外国人にとっては、それが魅力的な料理なのかどうか判断できません。

これを「River sweetfish, salt-grilled whole. Caught in the clear streams of Gifu. Best enjoyed biting from the head, savoring the subtle bitterness of the innards.」と書いたらどうでしょう。産地、調理法、食べ方まで伝えることで、料理が「体験」に変わります。訪日外国人の食事満足度調査では、料理の背景情報がある方が満足度が約25%高いという結果も出ています。

ストーリーテリングが注文率を変える

大阪のある割烹料理店では、英語メニューに各料理の「ストーリー」を3行程度で添えました。食材の産地、その食材が旬である理由、地元でどのように食べられてきたか。たとえば「このだし巻き卵は、大阪の家庭で朝食の定番として親しまれてきた一品です。利尻昆布と鰹節から引いた出汁をたっぷり含ませ、職人が一層ずつ丁寧に巻いています」といった説明です。

導入後、外国人客の一人あたり注文点数が平均1.5品から2.3品に増加しました。「何を頼めばいいかわからない」という不安が解消され、「これも食べてみたい」という好奇心に変わったのです。

アレルギーと宗教対応の表示は信頼の基盤

多言語メニューにおいて、ストーリーテリングと同じくらい重要なのが、アレルギーと宗教に関する表示です。欧米からの旅行者の中にはグルテンフリーやナッツアレルギーの方が多く、ムスリムの旅行者は豚肉やアルコールの有無を確認する必要があります。

主要アレルゲン(小麦、卵、乳、えび、かに、そば、落花生)をピクトグラムで表示し、豚肉・アルコールの使用有無をアイコンで明示する。これだけで「この店は安心して食べられる」という信頼が生まれます。ある調査では、アレルギー・宗教対応表示がある飲食店は、外国人客のリピート率が約30%高いというデータもあります。

写真と表示の組み合わせで言語の壁を超える

文字情報だけに頼る必要はありません。料理の写真に加え、食材のイラストや調理工程の簡単な図を添えるだけでも理解度は大幅に上がります。盛り付けの美しい写真は、それ自体が「注文したい」というモチベーションになります。

完璧な翻訳メニューを目指すよりも、まずは看板メニュー3品だけでも「ストーリー付き」の多言語表記にしてみてください。産地、調理法、おすすめの食べ方。この3要素を足すだけで、メニューは「翻訳」から「体験の入り口」に変わります。

YS Media Agencyは、インバウンド向けコンテンツの企画・制作から多言語展開まで、食と観光の情報発信を支援しています。

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