「温泉地に来る外国人は増えたけれど、日帰り入浴だけで客単価が上がらない」。多くの温泉地がこのジレンダを抱えています。せっかく世界に誇れる温泉資源があるのに、宿泊や周辺消費に結びつかず、地域経済への波及効果が限定的なままという声をよく耳にします。
でも実は、温泉を「ウェルネス観光」の文脈で再定義することで、高単価旅行者を獲得している自治体が出てきています。Global Wellness Instituteの2025年レポートによると、ウェルネスツーリズムの世界市場規模は約1.1兆ドルに達し、年間成長率は一般観光の約2倍のペースで拡大しています。さらに、ウェルネス目的の旅行者は一般観光客と比較して一回の旅行での消費額が平均53%高いというデータも示されています。
この潮流をいち早く捉えたのが、大分県別府市の取り組みです。別府市では「BEPPU WELLNESS JOURNEY」と銘打ち、温泉入浴に加えて、地元の食材を使った薬膳料理体験、森林セラピー、温泉蒸気を活用したサウナプログラムなどを組み合わせた3泊4日のパッケージを造成しました。ターゲットを欧米豪の富裕層に絞り、一人あたり単価を15万円以上に設定。海外のウェルネス系メディアやインフルエンサーを招聘したファムトリップを実施した結果、プログラム開始から1年で海外からの直接予約が月間50件を超え、参加者の満足度は96%に達しました。
自治体がウェルネス観光戦略を構築するために押さえるべきポイントは3つあります。第一に「ストーリーの構築」です。温泉の泉質や効能を科学的根拠とともに発信し、単なるレジャーではなく「健康への投資」というポジショニングを確立します。第二に「体験の複合化」。温泉だけではなく、瞑想、ヨガ、地元食材の料理教室、自然散策など複数の体験を組み合わせて滞在日数と消費額を伸ばします。第三に「認証・品質管理」。国際的なウェルネス認証の取得や、サービス品質の基準を設けることで、高単価に見合う信頼性を担保します。
温泉資源は日本各地に存在します。ウェルネス観光への転換は、必ずしも大規模な投資を必要としません。既存の温泉施設に地域の食や自然体験を組み合わせるだけで、新たな価値が生まれます。まずは一つのモデルプランを作り、少人数のテストツアーから始めてみることをお勧めします。
筆者: YS Media Agency|Gantaleプラットフォームを通じて海外クリエイターと日本のブランドをつなぎ、本質的なストーリーテリングを実現しています。


